Profoto プロジェクト開始時の課題
なぜ、新しいアフターサービス体制が必要だったのか
世界基準のブランドにふさわしいアフターサービスを、中国で実現するために
2019年、Profotoは中国市場における事業体制を大きく転換しました。
それまで中国市場での販売とアフターサービスは、主に販売代理店によって運営されていました。しかし、Profoto中国法人の設立に伴い、製品供給や販売体制だけでなく、修理、顧客対応、物流、品質管理を含むアフターサービス全体についても、Profotoのグローバル基準に沿った体制へ移行する必要がありました。
新しいサービスセンターを立ち上げることは、単に修理場所や委託先を変更することではありません。
受付から診断、修理、品質確認、出荷、顧客への説明まで、すべての工程を一つの運営システムとして設計し直すことが、このプロジェクトの出発点でした。
販売代理店に依存した体制から、ブランドが管理できる体制へ
従来のサービス現場には、長年の経験を持つ技術者がいました。
一方で、修理の判断、作業方法、情報の記録、顧客への説明など、多くの業務が担当者個人の経験と判断に依存していました。
私たちが最初に旧サービス拠点を訪問した際、一人の技術者が故障診断、修理、部品管理、作業記録、さらには顧客対応まで、ほぼすべての業務を担当していました。
技術者個人の能力が高くても、その経験が標準化されていなければ、担当者が変わったときに同じ品質を維持することは困難です。
また、紙やExcelを中心とした管理では、一件ごとの修理状況をリアルタイムで把握し、修理履歴や故障傾向を継続的に分析することにも限界があります。
Profotoが中国市場で必要としていたのは、単に「修理ができる拠点」ではありませんでした。
必要だったのは、Profoto自身が品質、進捗、顧客対応を継続的に管理できるアフターサービス体制でした。
最大の要求は、修理期間を4営業日以内に短縮すること
プロジェクト開始時に示された最も重要な目標の一つが、修理リードタイムの大幅な短縮でした。
それまで、修理完了までに1か月から2か月を要するケースもありました。
これに対して、新しいサービスセンターに求められた目標は、
平均4営業日以内で修理を完了すること。
しかし、単に技術者の作業速度を上げるだけでは、この目標を達成することはできません。
製品の受け付け後、速やかに故障内容を確認し、必要な部品を判断し、修理を行い、性能と外観を確認したうえで出荷する。
このすべての工程が滞りなくつながって、初めて修理期間を安定して短縮できます。
そのため、受付、診断、修理、部品管理、品質確認、梱包、出荷までの流れを、最初から見直す必要がありました。
製品が変われば、修理の仕組みも変えなければならない
AXION HUBには、Terra Ringプロジェクトを通じて構築したSOPや、アフターサービス管理システムの基盤がありました。
しかし、Profoto製品は、それまで取り扱ってきた製品とは構造も用途も大きく異なっていました。
Profotoの製品は、プロフェッショナルフォトグラファーや撮影スタジオで使用される業務用機器です。
修理後には、単に電源が入り、発光するだけでは十分ではありません。
発光量、色温度、連続発光時の安定性、操作性、外観、組み立て精度など、実際の撮影環境を想定した品質確認が必要になります。
また、Profotoから提供された修理資料は、製品開発者が技術者向けに作成したものであり、基本的な構造や修理方法を理解するうえでは有効でした。
一方で、日常の修理作業で品質を統一するためには、さらに具体的な情報が必要でした。
例えば、
- 各部品とねじの正確な位置
- ねじの規格と締め付け方法
- フラットケーブルの取り回し
- 組み立て時の注意点
- 修理後に確認すべき外観状態
- モデルごとの検査方法
といった内容です。
そのため、メーカー資料をそのまま使用するだけではなく、実際の修理経験を反映しながら、現場で再現可能なSOPへと具体化していく必要がありました。
熟練技術者ではなく、安定した品質を生み出す環境をつくる
私たちが目指したのは、最も優れた技術者一人に業務を依存する体制ではありませんでした。
目指したのは、必要な教育を受けた技術者が、整備された環境と標準化された手順の中で作業することで、安定した品質を提供できる体制です。
そのためには、ソフトウェアとハードウェアの両方が必要でした。
ハードウェアには、清潔で十分な広さを持つ修理スペース、合理的な作業動線、安全性の高い工具、検査装置、ESD対策などが含まれます。
ソフトウェアには、SOP、品質基準、教育・考核制度、修理情報を管理するシステム、顧客への説明基準などが含まれます。
Terra Ringプロジェクトで構築した運営基盤の多くは活用できましたが、Profotoの製品特性と要求水準に合わせて、全面的に調整する必要がありました。
運営体制だけでは解決できない、技術上の課題
プロジェクト開始時に直面した問題は、管理や業務フローだけではありませんでした。
実際の修理作業を進めるうえで、安全性と作業効率に関わる重大な技術的課題も存在していました。
高電圧環境での故障診断
Profotoのストロボ製品には、内部電圧が700Vを超える回路があります。
故障診断では、製品を作動させた状態で内部電圧を測定しなければならない場合があります。
しかし、内部の測定ポイントは非常に狭く、正極と負極の間隔が数ミリ程度しかない箇所もあります。
一般的なテストプローブを手で持ったまま測定すると、プローブ同士が接触し、短絡を起こす危険があります。
これは、修理中の製品を損傷するだけでなく、作業者の安全にも関わる問題でした。
安全な測定方法を確立できなければ、故障判断に長い時間がかかり、4営業日以内という修理目標を安定して達成することもできません。
製品内部に蓄積した大量のほこり
Profoto製品は、撮影スタジオやロケーション撮影など、さまざまな環境で長期間使用されます。
そのため、送修された製品の内部には、大量のほこりが蓄積していることが少なくありません。
修理前に内部を清掃する必要がありますが、圧縮空気による除塵作業を通常の修理スペースで行うと、ほこりが室内に拡散し、ほかの製品や作業環境に影響を与えます。
従来の修理現場では屋外で除塵を行っていましたが、この方法には、雨天時に作業できない、周囲に粉じんが飛散する、安全管理が難しいといった問題がありました。
高品質な修理環境を維持しながら、天候に左右されず、安全に除塵作業を行うためには、新しい設備と作業方法が必要でした。
技術課題を解決しなければ、運営目標も達成できない
高電圧環境での測定と、製品内部の除塵。
この二つは、一見すると現場レベルの技術問題に見えます。
しかし実際には、修理期間、品質、安全性、作業環境のすべてに関係する、サービスセンター全体の運営課題でした。
どれほど優れた管理システムやSOPを導入しても、現場の技術的な障害が解消されなければ、安定した修理品質と短いリードタイムを実現することはできません。
そのため私たちは、既存の工具や方法だけに頼るのではなく、現場の問題に合わせて検査治具や専用設備を自ら設計することになりました。
高電圧回路を安全に測定するために開発した専用プローブと、室内で安全に除塵作業を行うために設計した専用除塵設備。
Profotoプロジェクトで直面した二つの技術課題と、その解決までのプロセスを紹介します。
技術課題への挑戦を詳しく読む >>>
修理センターではなく、運営システムを構築する
このプロジェクトで必要だったのは、従来型の修理工房を新しく用意することではありませんでした。
必要だったのは、Profotoのブランド基準に沿って、品質、スピード、安全性、情報、顧客体験を継続的に管理できるアフターサービスシステムでした。
そのため私たちは、Terra Ringで培った経験を基盤としながら、
- Profoto専用の修理SOP
- 技術者の教育・考核制度
- 修理情報管理システム
- 品質確認基準
- 部品と物流の管理方法
- 安全で効率的な修理環境
- 現場課題を解決する専用設備
を一つずつ再設計していきました。
ここから、Profoto中国サービスセンターを構築する新しい挑戦が始まりました。
