ゼロから始めたアフターサービス体制の構築
製品発売までの約1か月で、受付・修理・品質管理・物流の仕組みを整える
1. プロジェクト開始時の状況
2016年、私たちは子ども向けスマートウォッチ「TERRA RING」のアフターサービスプロジェクトを受託しました。
当時、私たちには精密機器の修理経験がありました。主力エンジニアの多くはカメラメーカーの修理部門出身であり、小型精密機器の分解・組立・品質管理について十分な技術を持っていました。
しかし、その一方で、ブランド専属のアフターサービス体制を運営した経験はありませんでした。
正式なSOPはまだ整備されておらず、専任のカスタマーサポートチームもありません。物流管理や部品管理の仕組みもなく、修理状況を一元管理するシステムも存在していませんでした。
つまり、修理技術は持っていても、それをブランド全体のサービスとして提供するための「運営の仕組み」は、まだ何もない状態だったのです。
2. 製品発売までに残された時間
最も大きな課題は、時間でした。
製品の発売日はすでに決まっており、延期することはできません。
発売と同時に全国のユーザーから問い合わせや修理依頼が届くことを考えれば、その時までに受付、修理、品質管理、物流、部品供給までを含めたアフターサービス体制を完成させる必要がありました。
私たちに残されていた時間は、およそ1か月。
その間に拠点を準備し、人材を育成し、SOPを作成し、管理システムを開発しなければなりませんでした。
振り返れば、もっとも不足していたのは人員ではなく、「準備に使える時間」だったと言えます。
3. 工場と開発拠点から学ぶ
私たちは最初に修理センターを作ることはしませんでした。
まず製品を理解することから始めました。
最初に訪れたのは、深圳にある製造工場です。
ここでは修理方法を学ぶことではなく、「製品がどのように製造され、どのような品質基準で出荷されているのか」を理解することが目的でした。
私たちは工場の組立工程や検査工程を確認し、実際に組立研修を受けながら、出荷時の品質基準や検査設備について学びました。
修理センターを工場の縮小版として設計するという考え方は、この時に生まれました。
続いて杭州の開発拠点では、開発エンジニアからソフトウェア、サーバー、アプリケーションについて研修を受けました。
それまで私たちの経験は主にハードウェア修理でしたが、TERRA RINGは通信機能やアプリケーション、クラウドサービスと連携する製品です。
そのため、IT担当者も同行し、製品だけでなくシステム全体を理解することに重点を置きました。
この二つの研修によって、「どう修理するか」だけではなく、「なぜそのような設計になっているのか」を理解できるようになり、その後のSOP設計にも大きな影響を与えました。
4. SOPと現場構築を並行して進める
研修が終わると、すぐに修理センターの立ち上げが始まりました。
しかし、私たちはSOPを完成させてから現場を作るという方法は取りませんでした。
SOPの作成、修理センターの設営、エンジニア教育、管理システムの開発を、すべて並行して進めたのです。
例えば、工場や開発拠点で得た知識は、その日のうちにSOPへ反映されました。
新しい修理手順が決まれば、管理システムにも反映され、同時にエンジニア教育にも取り入れられます。
カスタマーサポート用の故障分類も、システム開発と並行して整理され、実際の運営開始後は現場からのフィードバックを毎週反映しながら改善を続けました。
つまり、SOPは最初から完成していたものではありません。
現場とともに成長する運営基盤として設計されていたのです。
この経験は、後にAXION HUBが現在まで継続している標準化の考え方の原点となりました。
5. 3週間で試験運用へ
約3週間後、修理センターは試験運用を開始しました。
その時点では、受付、修理、品質管理、物流、部品管理、カスタマーサポート、管理システムが一つの流れとして機能し始めていました。
もちろん、すべてが完成していたわけではありません。
実際の運営が始まってからも、毎週のようにSOPや管理システムを改善し続けました。
しかし、最も重要だったことは、単に修理センターが完成したことではありません。
ブランドのアフターサービスを支える「運営の仕組み」が動き始めたことです。
このプロジェクトで構築した考え方は、その後のProfotoプロジェクトをはじめ、現在のAXION HUBの運営にも受け継がれています。
6. この経験から得たこと
- 製品を理解することは、修理を始める前に行うべき最初の仕事である。
- SOPは完成品ではなく、現場の経験を反映しながら育てていく運営基盤である。
- アフターサービスセンターとは修理工場ではなく、ブランドの品質と顧客体験を支える運営システムである。
